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監修
CFOジャパン株式会社 代表取締役社長 中嶋 智
銀行、上場アパレルの経理部門を経て、ITベンチャー企業に転身。
CFOとして2社の新規上場に成功。資金調達やM&A、組織力強化、マネジメント育成などに強みを持つ。
経営者が人事制度は構築したがうまく運用できない、評価や給与への不満を持つ社員が多い、高額な採用コストをかけても辞めてしまう、優秀な社員が採用できないなどの人事的な諸問題を感じた時、その原因を人事制度の仕組みの問題と考えてしまう場合が多いようです
そのため、有名企業が導入している手法が課題を解決してくれる魔法の杖のように感じてしまいます。「隣の芝が青く見える」症状です。
仕事は結果が重要だという風潮が拡がれば「成果主義」、成果主義が個人主義を助長すると感じれば「役割主義」、上司の評価だけでは評価が偏るものだと思えば「360度評価」、評価者の負担が大きいと思えば「リアルタイム評価」、等級の運用が難しいと感じれば「ノーレイティング型」といった感じでしょうか。
結論から言えば、制度云々よりも、「運用」、それも「評価者」がカギ握っていると断言します。
前回の記事でもお話ししたうように、社員の2/3が評価に不満を感じています。
(出典:日経BP 2018年2月)
![Q.あなたの勤務先の人事評価制度に満足ですか?](https://aruji.net/wp-content/uploads/2021/03/48643082ca55db95e4c21b259de17e85.png)
では、その不満の理由とは何でしょうか?
上位回答は概ねどこの会社でも同じになります。
1位 「やったことをしっかり見て欲しい」
(そもそも私の仕事を把握していない、見ていない)
2位 「評価結果のフィードバック・説明がない、または不十分」
3位 「目標の難易度、量が人によってまちまちで、不公平を感じる」
4位 「誰が誰を評価しているのか不明。私の上司は誰ですか?」
5位 「評価がいい加減。評価が最初から決まっているのでは?」
6位 「同じことをやっているのに、上司によって評価が変わる。」
7位 「何を期待されているか、何を目指してやれば良いのか分からない。」
8位 「期の途中で目標の優先順位が変わった場合の対応が不明瞭。」
9位 「そもそもあの上司に評価されたくない。管理職のレベルが低い。」
不満のベスト3を、部下の立場から期待を込めた言葉に変えてみましょう。
1位 「上司さん、私の仕事をしっかり見て評価してください。」
2位 「上司さん、評価結果のフィードバックの場を設定し、しっかりと説明してください。」
3位 「上司さん、それぞれのレベル、役割に応じた目標設定に我々を導いてください。」
これらの結果から分かることは、問題は「制度」ではなく、「評価者」であることが分かります。
つまり、評価者がしっかりと部下を観察して評価を行い、その結果のフィードバックを適切に行い、目標設定を妥当なものにできれば、たとえ大幅に評価制度を変えなくても社員の満足度は上がるのです。
評価にかける時間は無駄な時間?
部下の評価をしっかり行うためには、日頃から部下の行動を観察・記録する必要があります。
フィードバックについても結果連絡の面談に終わらず、部下の納得を得て、前向きな姿勢に導くような面談を行おうとすれば、1人の面談にかける時間は最低でも1時間はかかると思います。
また、部下の目標設定にこだわり、組織の目標と部下の目標の連動性を保ち、チャレンジを引き出すためには、やはり時間をかける必要があります。
管理職からは、おそらく以下のような言葉がでてくることと思います。
「仕事が忙しいのに、評価にそんなに時間をかけている余裕はありませんよ!」
会社を経営している皆様はどのようにお答えになりますか?
「確かに。現場を回すことが第一だからな、、、」
確かに、短期的には現場はいつも通りに遂行され、問題なく事業運営されるかもしれません。
「中小企業は人員が潤沢ではないのだから仕方ない。経営者として現実に即した経営のバランスをとった。」と、自分を納得させることでしょう。
しかし、中長期的な視点で見た場合、組織はどうなっているでしょうか?
おそらく、以下のようになっていると思います。
・管理職が、リーダーとして一皮剥けていない。
(部長になっても現場をやってる。未来を作る仕事をしていない。)
・管理職が、部下育成に能動的に取り組んでいない。
・管理職が、自身の後任を育てていない。
・若い世代が組織に定着しない。 etc.
そんな組織は、5年後も、10年後も、同じ仕事を、同じやり方で仕事をしていることでしょう。
それに満足しない有能な人材は新たな挑戦を目指して転職して行き、組織の戦闘力は低下します。
そのうちに、時代は変化し、新しいアプローチで業界に変革をもたらしたプレイヤー(新興勢力)が市場を席巻していきます。
自社には多くのノウハウや実績がありながら、変化についていけません。
組織は人材の集合体です。
一人一人に個性があり、能力・価値観・目指すものも異なります。
リーダーはその一人一人の個性を把握して、人材マネジメントを行っていくことで、単なる人の集合体が「チーム」に昇華し、人数以上の力を発揮します。
組織を「チーム」にしていくためには、一人一人にあった「動機付け」、「育成」が必要不可欠です。
裏返すと、個人に最適化されていない動機付け、育成は効果が期待できません。
「評価」は、その「一人一人」の強み、弱み、個性、モチベーションなどの把握に有効なツールです。
その有効な武器である「評価」を時間の無駄と考える思考を変えない限り、その管理職の担当する組織は単なる「個人の集まり」です。
そこにマネジメントも、リーダーシップもありません。
事業運営の中で全社員が目の前の仕事に没頭しがちな中、「今」だけでなく、いつも「未来」を考えて意思決定をしないといけないのが経営者です。
どんなに現場の管理職が「評価にかける時間がない」と訴えても、その必要性と未来を理解させ、未来の組織力強化のために管理職としての重要業務である「人材マネジメント」に取り組ませるべきです。
評価システムは問題を解決してくれる?
ファンドから大型の資金調達をしたHRテックと言われるベンチャー企業がTVCMやタクシーCMなどを使って、大々的に評価システムの広告活動を行っていますが、人事的な課題解決に有効でしょうか?
結論から言えば、「評価業務の効率化には効果的であるが、評価者のレベルアップなしに本質的な目的は達成できない。」が答えとしては妥当です。
昨今、以下のような評価システムが注目されています。
・あしたのクラウド URL: https://ashita-team.com/ashita-cloud/
・タレントパレット URL: https://www.talent-palette.com/
・HRBrain URL: https://www.hrbrain.jp/
・カオナビ URL: https://www.kaonavi.jp/
・HRMOS URL: https://hrmos.co/perf/
【2021年版】クラウド人事評価システムおすすめ12選を徹底比較!より
確かに前述のような評価システムの機能は、とても便利だと思われます。
「人事データの見える化」
「評価業務の進捗管理」
「給与・賞与等決定との連携」
「分析機能」etc
しかし、見える化された人事データを活用するもの人、進捗管理や分析結果をもとに次のアクションを起こすのも人です。
いくらシステム化されても、コンピューターが部下を観察・評価してくれるわけでもありませんし、フィードバック面談をして動機付けや育成をしてくれるわけでもありません。
人の能力や行動は一つの事実で自動的に評価できるわけではなく、多くの定性的な情報から、評価基準の本質的な求めていることに照らし合わせて総合的に決めるものです。
だから人が評価をしています。この抽象概念は機械には理解できません。
評価システムの導入は相応にコストがかかります。中小企業にとっては大きな負担です。
お勧めしたい進め方は、まずはエクセルなどの評価シートでスタートして、評価者が適切に評価、フィードバック、評価の人材育成などへの活用ができるようになってから、効率化を目指して評価システムを導入してはいかがでしょうか?
最後に
なお、「会社のあるじ」を運営するCFOジャパン株式会社では、人事制度の設計から、その制度を組織に定着させ、人材マネジメントに活用するまで支援する「人材組織開発コンサルティング」を行っています。
すでに数千人の一部上場企業から数十人の中小企業様まで、50案件以上の実績があります。
制度設計後の運用を支援するには、やはり事業会社の中の人事部門統括責任者としての泥臭い経験が必要です。
CFOジャパン株式会社にはその事業会社での経験と、多様な業種、規模での多くのコンサルティング経験があります。
まずは、お気軽にご相談ください。