事業承継 あるじの伝書

会社売却による事業承継に「No」!

会社売却NOあるじの伝書

はじめに

日本企業全体の99.7%を占め、日本経済の「屋台骨」である中小企業が後継者不在で大量廃業の危機に直面しています。
中小企業庁によると、日本の中小企業経営者のうち、2025年までに約6割(約245万人)が70歳以上、約半数(約127万社)が後継者不在、その約半数(約60万社)が黒字にもかかわらず廃業に追い込まれ、約650万人の雇用と約22兆円の国内総生産(GDP)が失われると試算されています。
この「事業承継問題」の解決の選択肢として、会社を第三者に譲り渡すM&Aが注目されており、ニーズの広がりを見越して中小企業向けのM&Aサイト、M&A仲介会社、M&Aコンサルタント会社が増加しています。
しかし、中小企業の「事業承継問題」にM&Aという手法が本当に望まれているのでしょうか?

会社売却での事業承継に興味があるのは、たったの「6%」

山形銀行の2020年11月No.593「調査月報」で、山形県内企業を対象に「事業承継に対する意識調査」が行われました。

調査月報|法人・事業主のお客さま|山形銀行
山形銀行のホームページ。

事業承継に対する考えをたずねたところ、「必要ない」「わからない」「無回答」を除く、約85%が事業承継は必要であると考えています。そのうち18.7%が継承を済ませ、候補者が決定している企業が35.8%あるものの、約3割が後継者が不在であることが判明しました。

山形銀行の2020年11月No.593「調査月報」より

次に想定する後継者をたずねたところ、すでに後継者が決定している企業においては約83%が子、または子の配偶者を候補者としています。我が子を後継者にできた場合は、事業承継がスムーズに行きやすいと言えます。
一方で、後継者未定の企業においては我が子を後継者と考えている企業は約2割にとどまります。

山形銀行の2020年11月No.593「調査月報」より

さて、我が子や従業員を後継者にできない場合、M&A(会社売却)による事業承継は重要な選択肢と考えられているのでしょうか? 
結論は「NO」です。
「関心がない」が全体の2/3を占め、「売却に関心がある」と回答したのは僅か6%にすぎません。

山形銀行の2020年11月No.593「調査月報」より

では、中小企業経営者の事業承継についての本当の悩みは何なのでしょうか?
アンケートでは、後継者が決定/未決定に関わらず「後継者の育成」「社内体制の整備」との回答が突出して上位にきています。もちろん、後継者候補が未定の場合は、「後継者候補の確保」が重要になります。この場合の後継者候補は外部招聘もあれば、社内人材の育成も含まれます。

山形銀行の2020年11月No.593「調査月報」より

事業承継の要諦は、後継者育成と承継後に向けた体制整備

前述の調査結果からわかることは、事業承継問題については「M&Aによる事業承継」は数ある選択肢の一つですが、その前にいくつかの考えるべきこと、やるべきことがあります。重要なポイントは以下の通りです。

①後継者候補の決定
子、兄弟、親族などの身内、従業員の中から、この会社を今後も維持・成長させることができる資質のある人、従業員や関係者から信頼を得られる人を後継者候補として選ぶ。
この時点では、候補者は1人ではなく複数人とし、責任を持って達成すべき事業上目標を設定、その取り組みプロセスや結果、周囲との関わり方などを見ながら、絞り込みをするのが理想です。

②後継者育成カリキュラムに基づき、後継者として育てる。
経営に必要な「知識」教育、責任ある立場での「経験」、先輩経営者としての「支援」を計画的に行うことが重要です。

③承継後に向けた後継者候補は、能力や知識が十分であったとしても、「経験」、「結果」、「自信」、周囲からの「信頼」が圧倒的に不足している場合が多いものです。
だからこそ、従来のスーパーマンのような創業者などのワンマン経営体制から、組織で経営を行う「チーム経営」に移行することを目指すことをお勧めします。
この時、後継者が力を十分に発揮でき、弱い部分をサポートできる体制を構築していきます。なお、体制整備とは人的体制のことだけを指すわけではなく、チーム経営を行うために必要なルール、運用を徹底することも指しています。

上記の①②を行った中で、想定した候補者として育たなかった場合で、新たな候補者を育成する時間的な余裕がなければ、外部からの招聘も検討する必要があります。この場合も②と③は必要です。

なお、会社のあるじを運営するCFOジャパンでは、事業承継問題を抱える企業様に後継者を紹介、スムーズな承継を支援する「あなたの後継者」というサービスを行っています。
また、後継者を外部から紹介する以外にも、自社の人材を後継者として育てるために、仕組み作りとその実行を支援しております。

人生の多くの時間をかけて育ててきた自社はモノではありません。モノのように売り買いするM&Aを検討する前に、後継者育成をお考えみませんか?
まずはお気軽にご相談ください。

PAGE TOP