あるじの本懐

「まずは行動!」多彩な事業を展開してきた経営者:原田準一郎の向上心

写真_(株)フラッシュエージェント_原田社長あるじの本懐

スマホ修理業界の最古参であり、他社にはない修理品のラインナップを取り揃えている株式会社フラッシュエージェント。フラッシュエージェントは、2020年12月現在、スマートフォン・タブレットなどを修理する「スマホ修理王」を東京・名古屋・大阪・愛媛に計10店舗展開しています。その技術力は業界でも抜きん出ており、スマホが壊れて困った多くの人が、日々「スマホ修理王」に訪れています。

そんなフラッシュエージェントを立ち上げたのが、中央大学法学部を卒業後、長年、通信畑を歩んできた代表取締役である原田準一郎氏です。今回は会社のあるじインタビュアーの庄子が、原田氏の現在に至るまでの歩みを伺いました。

弁護士を目指した学生時代

庄子:はじめまして。本日は株式会社フラッシュエージェント代表取締役の原田様に、経営者としてのお考えや成功談・失敗談など幅広いテーマでお話を伺いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

原田:こちらこそ、よろしくお願いいたします。

庄子:原田様は中央大学法学部のご出身でいらっしゃいます。もともと弁護士を目指していらっしゃったのですか?

原田:はい。中学生頃から弁護士になりたいと思っていました。それまでは、社会や理科といった教科を勉強していても「これが世の中に出てどんな役に立つのか?」と疑問に思っていました。しかし、「民法」に関する漫画を読んで「これこそが世の中に通用する学問だ」と、法律に興味を持つようになりましたね。

庄子:それで中央大学法学部に入られたのですね。

原田:そうですね。ただ、今思うと、ものすごく強い思いを持って弁護士になりたかったというと…そうでもない気がします。司法試験は受験しましたが、弁護士にはならず、新卒で通信系の商社に入社しました。

庄子:そうなんですね。通信系の商社に入られた理由はなんですか?

原田:かっこいい先輩がいたからです。正直、会社が何をやっているかは分かっていませんでしたが、先輩に憧れるままに。その先輩とは今でも良い付き合いをさせて頂いています。

庄子:学生からすると、かっこいい社会人の先輩は輝いてみえますよね。

原田:はい。The・商社マン!といった感じで、颯爽としてかっこよかったですね。英語喋って、夜は派手に遊んでいて…私も色々遊びを連れていってもらいましたが、本当に大人で紳士な遊びをしていましたね。

クレーム担当を通して成長

庄子:通信系の商社では、最初にどんなお仕事をされていましたか?

原田:キャリアショップのクレーム担当をしていました。

庄子:クレーム担当ですか…なかなか大変そうなお仕事ですね。

原田:いや、結構楽しかったんですよ。

庄子:クレーム担当が楽しかったんですか?

原田:はい。まず勝ち負けがはっきりするのが良いですね。ここで言う勝ちとは「私が対応して、相手に納得してもらって帰ってもらう」ということです。単純に納得してもらえると嬉しいですよね。また、ここだけの話ですが…最初にクレームをもらうのは窓口となる派遣社員の女性が多いのですが、クレームを言う方は「男出せ」「社員出せ」の2つを主張してきます。そこで男の社員である私が出ていって、対応すると、最初に対応した女性社員から「クレーム対応してくれてありがとう」なんて感謝されるのも嬉しかったですね。

庄子:それは嬉しいですね!日々クレームを浴びて、つらいとは思わなかったんですか?

原田:つらいとはあまり思いませんでしたね。仕事ってそういうものだと思っていました。むしろ、日々難題にぶつかることで、どんどん自分の能力が上がっていく感じがして、とてもやりがいを感じました。

庄子:向上心がお強いですね。

原田:「自分の能力を上げていきたい」という気持ちがすごく強いんですよね。上司に「壁に棒グラフが書いてあるような、厳しい組織に入れてほしい」なんてお願いをしたこともあります。ただ、「うちにはそういう舞台はない」と言われてしまいました。今も能力を上げていきたいという気持ちは強く持っています。

庄子:通信系の商社を辞めた後は、色々なフリーの営業をされていたとお聞きしました。通信系の商社を辞められた理由もそうした厳しい環境を求めたことにあるのでしょうか?

原田:そうです。通信系の商社では、若手の自分たちがさまざまな権限を持っていました。その関係で、私の父親くらいの年齢の人から接待を受けていたんですね。それが私としてはどうにもしっくりこなくて…自分の力でもないのに、なぜこんな接待を受けているんだと感じていました。若いうちはもっと厳しい環境に身をおいて、自分の能力を上げていきたい、そう思って、通信系の商社を辞めて独立しました。

独立して「さぁ何やろうか…」と思って、二度寝した

庄子:サラリーマンを辞めて独立するのは、大きな決断だったのでないかと思います。

原田:ただ私は、辞めてから「さぁ何しようか!」といった感じでした。

庄子:そうなんですか。特に計画的に独立したという感じではないんですね。

原田:はい。今から思うと無謀なのですが、私は12月末に通信系の商社を辞めて、1月1日~フリーになったわけですが、1月4日か5日頃に、「さぁ仕事をしよう!」と思ってスーツを着てネクタイを締めたんですね。ただ、行くあてがないんです。そのまま「さぁ、何やろうか・・・」と思って、結局二度寝しました。

庄子:本当にまっさらからのスタートだったんですね。

原田:よく、ここまで生きてこれたな…と思います。ただ、そうは言っても、何もしない訳にはいかないので、まずはバイク便の営業を始めました。バイク便は営業力があって、たくさん受注できると稼ぐことができたんです。定期収入が数百万円入る見込みができた時に、人を雇い始めて法人化しました。

庄子:バイク便の営業って稼げたんですね。

原田:はい。ただ、時代の流れとともに、バイク便の需要は減っていきました。元々携帯電話業界から多く受注していたのですが、時代背景として、当時はsimカードではなく、mova(ムーバ)という携帯電話サービスが主流で、実際に携帯電話を運ばないといけない仕組みがあったんですね。なので、バイク便の需要が高かったですが、その後携帯端末の進化により、携帯電話を運ぶ必要がなくなり、どんどんと需要が減っていっちゃたんですね。

庄子:バイク便の後は何をされたのですか?

原田色々やりましたね。例えばNTT光ファイバーの営業もやりました。当時のインターネット環境は、ADSLが主流だったのですが「NTT光ファイバーに乗り換えたら安くて通信も速くなりますよ」という切り口で営業をしていました。とにかくNTT光ファイバーの商品力が高かったので、どこに行っても受注することができましたね。ただ、今となっては、光ファイバーは当たり前に皆使っています。この仕事も時代の流れとともになくなっていきました。私のビジネスは時代の流れの影響を受けるんです。良い意味では時代の流れに乗っているとも言えますが。

写真_(株)フラッシュエージェント_原田社長

庄子:時代に乗れるビジネスを見定める嗅覚を感じます。

原田:まぁ情報には恵まれているというのもありますね。あと私は良い意味で「これって絶対稼げるじゃん!」と思ったらそれに突っ走る傾向があるんですね。今は経験を積んできたので、「これは失敗するかも…」というリスクも見えますが、今までは「絶対上手くいく!」と突っ走ってきました。だからこそ、失敗もありますが、良い情報をたくさん得て、ここまで来れたのもあります。

庄子:さまざま業態変更をされる中で、苦労したことは何ですか?

原田:最初は賛同者が少ないことですね。何をやるにしても大体逆風から始まります。私に近ければ近い人ほど心配してくれるので「絶対やめておいた方が良い」、遠ければ遠い人ほど適当に「儲かるんじゃないですか~」と言ってくる傾向がありますね。

庄子:そのように後ろ向きであったり、適当なことを言われることに対してどういう感想を持ちますか?

原田:周りの反応としては、そういうもんだと思っています。ただ「やってみないとわからない。やった先になにかある。」とは思っています。「やってダメだったのと、やらなくてダメだった」のは全然違います。やってダメだったら、納得できます。だからこそ、私は人からの反対は気にせずやっています。

「iPhone 修理」のSEOが弱いという失敗から成功へ

庄子:現在、代表取締役を務めていらっしゃる株式会社フラッシュエージェントのお話を聞かせください。まずは「スマホ修理王」を立ち上げた経緯を教えてください。

原田:私は通信系の仕事に長く携わっているので、通信系のネットワークがあるんですね。そのネットワークで、ある時、社長4人が集まって、「中国ではiPhoneの修理ができて、それがビジネスになっている。4人でiPhone修理の商売を日本でもやってみよう」という話になったのが始まりです。

庄子:ネットワークでの話し合いの中から生まれたんですね。また「スマホ修理王」はiPhoneの修理屋さんの中でも最古参にあたるとお聞きしました。

原田:今ではiPhoneの修理屋さんはたくさんありますが、弊社が最初ですね。

庄子:iPhone修理業界の先駆け的存在なんですね。

原田:ただ、弊社は「iPhone 修理」のSEOが強くなかったんですね。そのため、iPhoneを修理したいと思ってお客様がインターネットで検索しても、弊社のページがなかなか上位表示されませんでした。その結果、SEOの強い後発の会社に抜かれていく…という事態になってしまいました。ですが、実はこの「iPhone 修理」のSEOが弱いということが、最大の失敗であり、そして最大の成功にも繋がってくるんです。

庄子:「iPhone 修理」のSEOが弱いことが最大の失敗であり、最大の成功でもある…詳しく教えてください。

原田:はい。「iPhone 修理」のSEOが弱いため、ターゲット層への認知が不十分で、後発の会社に抜かれていってしまいました。これが最大の失敗です。そこで弊社が取った戦略は「他の武器を持つ」ということでした。つまり、iPhoneだけでなく、Xperia(エクスペリア)やGalaxy(ギャラクシー)など、他の誰もやっていない端末の修理を始めたんですね。その結果、修理できる製品のラインナップは業界でもトップになり、また技術力の高い人が集まるようになりました。SEOが弱かったがために、ラインナップと技術力がトップクラスという、業界内でも独自のポジションを築くことができました。

庄子:「他の武器を持つ=ラインナップを増やす」ことで、失敗を乗り越えたんですね。

原田:はい。また、ラインナップの広さは、在庫の適正管理に活きてきました。ラインナップが多いとどうしても保有在庫の数が増えてしまいます。弊社は各店舗で「どの機種のどの修理がどのくらいの件数を受注しているのか」というデータをデイリーで徹底管理することで、適正な在庫量を算出しています。業界内でも店舗ごとに適正な在庫量を徹底管理しているのはおそらく弊社だけだと思います。
そういった意味でもラインナップの広さは、今回のコロナ禍でも救われました。

弊社はスマホだけでなく、iPadやNintendo Switchも修理しています。コロナ禍では、テレワークで利用頻度の増えたiPadと、巣ごもりで使用頻度の増えたNintendo Switchの修理ニーズが増えたんですね。特に4~5月の緊急事態宣言時は、人が外に出ないので、スマホ修理のニーズがなく苦戦しましたが、iPadやNintendo Switchなどの修理ニーズに応えることで、サービス業としては持ちこたえることができました。

庄子:「SEOが弱い」という失敗に対して「他の武器を持つ」という対応が、コロナ禍にも活かされたんですね。

原田:はい。SEOが強くて、iPhoneだけの修理をしていたら、今頃は会社がなくなっているもしれませんね。

将来的には海外で戦っていきたい

庄子:株式会社フラッシュエージェントの現況お聞かせください。

原田:今、株式会社フラッシュエージェントという組織は過渡期だと捉えています。組織の規模が大きくなってきて、勢いで突き進んでいける規模ではなくなってきていると感じています。今までは私の知り合いだけだったこともあり、評価制度などもマニュアル化できていない面がありました。しかし、これからは組織として育てていかないといけない。そのために、組織図の見直しや評価制度の引き直しなど、さまざまな取り組みをしています。

庄子:今まさに過渡期なんですね。最後に今後の展望をお聞かせください。

原田:将来的には海外展開を考えています。ただ、この事業での海外展開はすごく難しいと思います。実は、スマホ修理の日本の技術は圧倒的に世界から遅れています。これは日本人の所得が高く、スマホが壊れても直さずに買い替える人が多いという理由があります。
一方、海外では、iPhoneがすごく高級品のため、古いものでも直して使うため、必然的に修理技術が高くなります。ただ、こうした現状であっても、日本の市場は「海外で戦えるだけの信頼」があると思うし、またフラッシュエージェントの「お客様が見えないところまでしっかりやる」という姿勢があれば、海外でも戦えると思っています。

写真_(株)フラッシュエージェント_原田社長

庄子:海外でも戦える強みをフラッシュエージェントは持っているんですね。

原田:弊社は修理にあたりお客さんが見えないところまで、嘘偽りなくしっかりやっています。そこは会社でも厳しく言っています。また引き続き、業界内でも、最も信頼されて、最も高品質のサービスを提供できるように、尽力していきたいと思っています。

:今年のコロナ禍で大変な思いをされている中小企業の経営者の皆さまに向けて、エールを送って頂けますでしょうか。

原田:コロナは1つのマイナスのイベントであり、経営者は色々なマイナスのイベントを経験していると思います。今後は地震や戦争などコロナ以上に大変なことも起こる可能性もゼロではありません。私も含め、経営者の皆さまが全力で築き上げてきた会社をコロナを理由に手放してはいけないと思っています。同じ経営者として、業界や業種は違えど、頑張って行きたいですね。

取材を終えて

取材を通して、代表取締役 原田様の仕事観には「自分の能力を上げていきたい」という思いがあることを強く感じました。これまで数々の事業を展開されてきた根底にあるのは、そんな強い向上心なのではないかと推測します。これから株式会社フラッシュエージェントがどんな成長を遂げていくのか、非常に楽しみになったインタビューでした。

株式会社フラッシュエージェント

代表取締役原田 準一郎(はらだ じゅんいちろう)
設立年2004年8月
本社東京都渋谷区南平台町16-28
Daiwa渋谷スクエア 10階
資本金1,000万円
URLhttps://flash-agt.com/

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