営業/マーケティング あるじの伝書

Amazing Gateway to Europe~欧州進出を目指して~③

駐日欧州連合の写真あるじの伝書

BREXITの影響

これから欧州へ進出する日本企業は、BREXIT(ブレグジット)によるビジネスへの影響を十分に認識した上で準備を進める必要があります。

2020年1月31日、イギリスはEU(欧州連合)を離脱しました。その前年である2019年3月の時点で、イギリスに進出している日本企業は計1,298社でした。業種の内訳は、製造業が510社(構成比39.3%)、サービス業が226社(同17.4%)、卸売業が223社(同17.2%)、そして金融・保険業が176社(同13.6%)という構成になっていました。
製造業が約4割を占めているということは、イギリス国内のみならず、欧州域内に主要な生産拠点として工場を有する企業が多いわけです。というのも、欧州単一市場のメリットは、人やモノ、資本、サービス等が国境に関係なく自由に移動できることであり、EU域内の様々な障壁が撤廃あるいは軽減され、域内の調和が図られ、経済活動の円滑化を推進しながら多大な経済効果をもたらすことにありました。

例えば、イギリスに本社を置いて工場をスペインに建設することは、本社は東京にあるけれども工場は岡山、という日本国内で完結するケースとそう変わらず、つまりはEU全体で1つの国に近い性格を持つことになったのです。

ところがBREXITにより、イギリスに進出した企業はその恩恵を受けられなくなる可能性が高くなってきました。離脱後、イギリスとEUは離脱協定に基づき移行期間を設け、2020年12月31日までは関税も通関検査も行わない関税同盟の状態を保っています。しかし年末が目前に迫っている現在、貿易協定を含む将来の関係交渉は難航しており、もし仮に自由貿易協定が締結されないとなれば、両者間の貿易で関税が復活することになります。

その場合、イギリスがEUから自動車部品を輸入して完成車をEUに輸出すれば、各貿易に関税が課せられるため、自動車関税10%に加えてさらに負担が増します。EU域内側の自動車産業も同様に負担を強いられることとなります。

その一方で、日本からイギリスおよびEU諸国に輸出する際には、自由貿易協定を利用することが出来るのです。

BREXIT後の英国進出はいかに?

イギリスの母国語は英語であるため、言語コミュニケーションの観点から、欧州進出を検討する際に候補として上位に挙がってくる国と思われます。けれども万が一、英EU貿易交渉が合意に至らなかった場合、進出先国の再検討も視野に入れておいた方が良いと考えられます。

冒頭で言及した、BREXIT以前に進出済みの日本企業の多くは、対欧州戦略の要としてイギリスに拠点を有しました。ところが今回の交渉の結果次第では、戦略の見直しを迫られることになるでしょう。その影響は各在英企業のみならず、サプライチェーンを支えている日本国内の製造業にまで及びます。とりわけ、EU諸国との非関税取引のメリットが薄れるため、海外からの資材調達に為替の影響を受ける可能性が高くなります。
また製造業に限らず、欧州を拠点として物流を担っている卸売業や運輸業への多大な影響も否めません。

現在、イギリス国内での生産調整や拠点の移転、資本の縮小、さらにイギリスからの引き揚げが段階的に進められています。欧州ビジネス自体のサプライチェーンも再編を余儀なくされています。この影響は、イギリス進出企業に限らず、それらの企業と取引を行っている日本国内の企業にも及んでいるのが実情です。

一方で、イギリスの人口は約6,790万人(2020年)と欧州の中でも有数の人口を持つ一大消費市場であるため、小売業・サービス業等の進出企業にとってはEU離脱後も引き続き魅力的な市場であり、イギリス国内での設備投資や在庫管理への投資が進むと推測できます。

ちなみに2020年9月11日、日英包括的経済連携協定(通称:日英EPA)の大筋合意がなされ、同年10月23日に署名が行われています。これによって、EU離脱後のイギリスと日本の間には、日本・EU経済連携協定(EPA)に代わる新たな貿易および投資のフレームワークが規定されました。
日英EPAの狙いは、イギリスのEU離脱に伴う移行期間の終了後も、進出日本企業によるビジネスの継続性を確保することであり、日EUのEPAで現在得られている利益損失の回避が可能となります。

これからイギリス進出を伺う中小企業は、EU離脱後のあらゆる政策変更の可能性を想定し、できる限り最新の情報を随時入手できる体制を整えておく必要があります。そのためにも、海外ビジネス支援の顧問やコンサルタントを外部から迎え入れることは、プロジェクトを円滑に進め、進出を実現する大きな指針となるでしょう。

欧州進出事例:膜構造屋根の場合

東京ドームの屋根に使用されている膜構造を製造したのは、太陽工業株式会社です。
この会社は元々、キャンプ用途のテントを作っていましたが、地道な研究開発とアイデア創出を続けた結果、技術力を身に付け、1970年の大阪万博で膜構造建築物(テント構造物)を実現し、大型膜面構造物の概念を大きく変えました。この時に「アメリカ館」で採用された空気膜構造と呼ばれる方式は、柱や梁のない広大な空間を創ることを可能にしたため、現在の東京ドームを始め多くのスポーツスタジアムで採用実績があります。

太陽工業が欧州に進出したのは、2004年のことでした。日本のバブル経済崩壊以降、海外に向けてビジネスを積極的に拡大し、その年にはドイツに現地法人を立ち上げています。

膜構造製品は欧州中のスタジアムや建築物に採用されていますが、製造は主に日本国内の工場で行われています。最近では、スイスのスウォッチ・グループ本社の新社屋を覆う大型屋根の施工が完了し、膜材フィルムと木材を組み合わせた美しいフォルムの半円柱形状屋根が、本社を含め、隣接するスウォッチ・グループ傘下であるオメガの工場、展示場、博物館といった施設全体を覆っています。

ちなみに欧州では会社名よりも”MakMax”というブランド名の方がよく知られています。「Mak=膜、Max=最大の」と短い言葉に意味を凝縮し、韻を踏んでいて発音しやすいので海外の人に覚えてもらえる上、視覚的にも容易に捉えられインパクトがあります。

このわかりやすさは、製品自体のブランディングを行う際にも重要となってきます。

太陽工業は、膜の特性を「柔らかい」「軽い」「光を通す」「大面積を覆う」「ものを包む」と5つの言葉で表現しています。どの言葉もシンプルでわかりやすく、膜製品を全く知らない人が初めて聞いても、どのような製品なのか何となく想像がつきます。

海外に進出する前の準備段階で、日本国内で展開している製品のブランド名を変えるべきかどうか、どの特徴を全面的に押し出して海外展開すれば良いのか、といった戦略についても、社内人材だけではなかなか良いアイデアが生み出せない場合も多々あるでしょう。

そんな時、思い切って外部人材をプロジェクト単位で登用し、現状打破の先導役として役割を担わせることも、新たな道を切り拓く上で一つの強力な手段となるのです。

最後に

全3回に渡って「Amazing Gateway to Europe〜欧州進出を目指して〜」というテーマで企業の海外進出について紹介させていただきました。

日本国内には、優れた技術力を持つけれども、どのようにPRしたら世の中に認知してもらうことができるのか?その技術力を国内はもちろん、海外にも伝えたいと思っている経営者の皆さまもいるのではないでしょうか?また、国内はもしかしたら頭打ちでも、海外市場において大きなビジネスチャンスが見つかることも考えられます。

本記事を執筆した専門家は、「会社のあるじ」を運営するCFOジャパン株式会社が提供するサービスの1つである、「現役世代の知恵や知見を自社のチカラに ‘‘ComoNeo’’」の顧問としても活躍中の海外進出に豊富な知見を持つ専門家です。
中小企業で「海外進出を考えている・新たな市場に挑戦したい」など考えている経営者の皆さま、「ComoNeo」では海外進出に実績ある専門家が御社の成功する海外進出をサポートします。お気軽にお問い合わせ下さい。

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