営業/マーケティング あるじの伝書

Amazing gateway to Europe~欧州進出を目指して~①

ドイツ南部_シュツットガルトあるじの伝書

海外進出=リスク?

 内需で十分ビジネスを成り立たせてきた中小企業にとって、そもそも海外進出はリスクなのでしょうか。或いは大きすぎるチャレンジと映っているのでしょうか。

現在、世界的なパンデミックによって、国際間における人の行き来が制限されています。
海外との取引に大きな比重を置いてきた企業は当然、現地での打ち合わせが困難になって不便を被ったり、工場に設備を輸出・据付するメーカーは、エンジニアを派遣することが出来ず納期が後ろ倒しになったりと、会社の生産・事業計画にまで影響を及ぼしているケースが多々見受けられます。
ある程度はITを最大限活用することにより解決できますが、やはりビジネスは人対人が基本、実際に顔を合わせてなんぼのところがあり、先行きの見えない現状におけるビジネスの不自由さは否めません。

それでは、内需にだけ目を向ける方が安全だと言えるのでしょうか。
視点を変えて外から日本を見てみると、実は国内市場も多くのリスクをはらんでいます。大地震や大型台風等の天災が起こるたびにストップする経済は、予測がつかないだけに非常なるリスクです。また、世界でも群を抜く少子高齢化社会、人材不足に加え、いずれ内需が縮小することも目に見えています。
内需に特化することは、短期的に見て賢明かもしれませんが、残念ながら、長期的には必ずしも希望的観測が持てるとは言い切れません。

このパンデミックで、確かに国際間におけるヒトの移動は激減しました。しかし、国際間におけるモノの行き来は、遅れを伴ってはいるものの、ヒトほど鈍っていないのが実情です。その土地でしか獲れない農作物、その工場でしか作れないオンリーワンの技術・・・必要とされる限りモノは絶え間なく長距離を移動し、世界中の人々の生活をより便利に、豊かにしてゆきます。需要と供給の関係には国境などありません。

国内市場と海外市場でうまくバランスを取りながらビジネスを行うことは、事業におけるリスク分散にもつながります。そして何より、自社の製品・サービスに誇りを持って、世界というフィールドに一歩踏み出してみることが結果、企業にも従業員にも新たな成長をもたらし、またその先にイノベーションが生まれ、それを今度は日本に逆輸入してヒットさせ、といったポジティブな循環を作る可能性が大いにあります。

このシリーズでは、海外進出の中でも比較的、商習慣の違いでそれほど大きなカルチャーショックを受けることがないであろう「ヨーロッパ」に照準を当てて、ゲートウェイとなる情報をご紹介してゆきます。

欧州の視点から見たニッポン

 日本の常識は世界の非常識、という言葉があります。これは、日本人が海外に出てみるといかに自分たちが島国根性で生きてきたかを思い知らされる時によく使われますが、逆もしかりです。

例えば、私たちにとって当たり前のように存在している東海道新幹線。東京-名古屋-大阪間の移動で頻繁に乗車される経営者の方々も多いことでしょう。本数が多く、直前でも手軽に乗れる上に、到着駅が都心にあるため降車後の目的地へのアクセスも良い、といった利点が思い浮かぶくらいでしょうか。

しかし、欧州から初めて来日するビジネスパーソンが必ずと言って良いほど仰天するのは、新幹線を待つホーム上の発車時刻表示版を目にした瞬間です。
「新幹線が3分おき?!自分の国だったらぶつかる!」
彼等にとって、この不可能に近い運転間隔を実現しているのは、ニッポンの制御技術なのです。

欧州から産業機械を輸入すると、中に組み込まれている制御装置の多くが有名な日本のメーカー製であることに気づかされます。装置自体が欧州製でも、内部の交換部品リストを見れば、相当数の日本製部品が部品商社を通じて欧州に出回っていることがわかります。
iPhone 内部の部品も多くが日本製ということは有名です。日本はアセンブリに弱いと言われますが、逆に日本の部品がなければ成り立たない完成製品は欧州に限らず、世界中に多く存在するのです。

また、モノに限らず日本独自のサービスも、欧州、海外への進出を十分に図れるでしょう。
話は新幹線に戻りますが、ターミナル駅で乗客が下りた後、たった7分で完璧な車内清掃を行う新幹線清掃員の姿は、視察で来日したフランスの高速鉄道TGVを走らせるSNCF(フランス国鉄)総裁を驚嘆させました。速度競争においてはライバルである新幹線とTGVですが、「付加価値」というソフトの点では新幹線の方が卓越していたのです。そのようなサービス・価値の部分を欧州に輸出することも、大いにポテンシャルが見いだせるのです。

けれども、中小企業が単独で欧州に進出するのはやはりリスクが高い、と思われるかもしれません。ただ、現在グローバル企業である日本の大企業も、その殆どが町工場からスタートしています。そして、欧州に進出するきっかけも、意外と身近に感じられるエピソードだったりするのです。

欧州進出:トヨタの場合

 世界のトヨタが欧州に進出したのは、高度経済成長初期であった東京オリンピックのちょうど2年前、1962年のことでした。当初は欧州進出を自ら目指し、北欧に2台の自社製品をサンプル輸出したのですが、これは功を奏しませんでした。

ところが、同じ年の秋に日本で開催された全日本自動車ショー(現東京モーターショー)を訪れたデンマークの輸入車販売店社長が、クラウンに目を付け、欧州で売れるスタイルの車であるとインスピレーションを感じ、デンマークでの販売権を取得します。
翌年には上記販売店と代理店契約を締結し、欧州市場への輸出が始まりました。

現在では、トヨタの欧州事業を統括するトヨタ・ヨーロッパをベルギーに置き、そこが統括する生産会社はチェコ、フランス、ポーランド、ポルトガル、トルコ、イギリス、加えてロシアと7カ国にわたります。
そして、トヨタの現地生産に伴い、多くの日本企業がベルギーをはじめ周辺国に進出し、工場を設立しています。

ジャパンスタンダードの品質を保ちながら現地で生産するためには、やはり日本国内での生産で培ってきた調達先企業との連携が不可欠であるからこそ、伴って進出するケースが多くなります。それも一つの、単独でリスクを背負わない形での欧州進出のきっかけとなるでしょう。

そして、前述のように、トヨタの欧州進出もきっかけが日本国内の展示会であったことを鑑みると、どの会社にもいつ何時どんなチャンスが転がり込んでくるかわからないのです。
ただ、その時に備えて、自社および自社製品のプレゼンスをしっかりと前面に出しておくこと、それは例えば国内外問わず展示会への定期的な出展であったり、その際にもチャンスを逃さないよう、海外企業の来訪に対応できる人財を確保しておくことであったりするのです。

その方法等については、次回以降またここで詳しくお話させて頂くことにします。
欧州進出を目指して、世界観がさらに広がる楽しみを一緒に味わうことができましたら幸いです。

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