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営業/マーケティング あるじの伝書

Amazing Gateway to Europe~欧州進出を目指して~②

あるじの伝書

個性豊かな欧州の国々

欧州(ヨーロッパ)と一口に言っても、そこには異なる様々な国が存在しています。
地理的には、ユーラシア大陸の北西に位置する半島であり、北部・西部・南部は大規模な水域に囲まれています。東部はウラル川・カスピ海・黒海~エーゲ海でアジアと区分されます。

総面積は1,018km2であり、総人口は約7.5億人。広義での国家数は(ロシア等も含め)50カ国ですが、欧州評議会(Council of Europe)加盟国は47カ国、欧州連合(通称EU:European Union)加盟国に至っては27カ国です。つい最近まで28カ国でしたが、皆さんもよくご存じの通り、2020年1月31日付でイギリスの欧州連合離脱(通称:Brexit・ブレグジット)が正式に行われたため、現在は1カ国減っています。
ちなみにこのEU離脱は、イギリスに進出している日本企業にも多大な影響を及ぼすことになりました。その詳細についてはまた追ってここで解説することにいたします。

イギリスやアイスランドといった一部島国を含むとはいえ、これだけ多数の国家が陸続きであるにもかかわらず、各国独自の言語や文化を守り通してきた歴史は、私たちから見ると驚きに値するのではないでしょうか。日本でも都道府県ごとに方言や文化の差異は見られますが、欧州の比ではありません。
冒頭に掲載した画像は、欧州で販売されているポストカードです。ここでは皮肉とユーモアをたっぷり込めてEU加盟国の国民気質がそれぞれ如実に描かれています。

“THE PERFECT EUROPEAN SHOULD BE…” 完璧なヨーロッパ人とは・・・

  • Cooking…like a Brit:イギリス人のように料理上手で(とは言えず・・・)
  • Driving…like the French: フランス人のように運転マナーが良く(わけない・・・)
  • Available…as a Belgian: ベルギー人のように常時対応可能で(休暇に対して・・・)
  • Talkative…as a Finn: フィンランド人のようにおしゃべりで(真逆の寡黙です・・・)
  • Humorous…as a German: ドイツ人のようにユーモアがあって(ないでしょう・・・)
  • Technical…as a Portuguese: ポルトガル人のように技術が得意で(苦手・・・)
  • Flexible…as a Swede:スウェーデン人のように柔軟性があって(お堅い・・・)
  • Famous…as a Luxembourger: ルクセンブルク人のように有名で(ないです・・・)
  • Patient…as an Austrian: オーストリア人のように我慢強くて(怒りっぽくて・・・)
  • Controlled…as an Italian: イタリア人のように落ち着いていて(どこが・・・)
  • Sober…as an Irish: アイルランド人のようにしらふで(常に赤ら顔・・・)
  • Humble…as a Spaniard: スペイン人のように謙虚で(あるはずもなく・・・)
  • Generous…as a Dutch: オランダ人のように気前が良くて(倹約家で・・・)
  • Organized…as a Greek: ギリシャ人のように片付け上手で(がちゃがちゃ・・・)
  • Discreet…as a Dane: デンマーク人のように慎重で(不謹慎で・・・)

上記の国のほとんどが日本よりも小国であり、人口も比較的少ないのです。それでもこれだけ個性豊かであり、同盟を結びつつお互いをけん制し合っている様子は、関西広域連合で独自性を発揮している大阪・京都・兵庫の関係性にどことなく似ている気もしてきます。

日本・EU経済連携協定

さて、2018年7月17日、当時の安倍晋三首相とEUのトゥスク大統領(Donald Tusk, President of EU)、ユンケル欧州委員長(Jean-Claude Juncker, President of European Commission)により、日本とEUの間で経済連携協定(通称EPA:Economic Partnership Agreement)に署名がなされ、2019年2月1日、EPAが正式に発効しました。

これによって世界の国内総生産(GDP)の約3割、そして世界貿易の約4割を占める世界最大規模の自由貿易圏および先進経済圏が誕生したのです。協定発効当時のEUのGDPは17.3兆ドル、世界のGDPの21.7%を占めていました。一方日本のGDPは4.9兆ドル、世界のGDPの6.1%。これだけ巨大な経済圏が自由貿易化を進めたことは、世界に模範を示すものであり、また、自国優先の通商政策を打ち出していた米国に対して存在感を与える意義もありました。

そして、EU側の関税撤廃率が99%であったため、日本産品のEU市場への輸出が非常に容易となりました。工業製品に関しては、100%関税を撤廃、当時税率が10%であった乗用車は発効後8年目に撤廃、また自動車部品も9割以上が即時撤廃となりました。これにより、大手メーカーのみならず、メーカーに部品を納入する中小企業も撤廃の恩恵を受けることとなったのです。
農林水産品に関しても、牛肉、茶、水産物等のほぼ全品目で関税撤廃、酒類に至っては全ての関税を即時撤廃となり、輸出の拡大とブランド価値の向上に大きく貢献することとなりました。

さらに、モノの行き来に加えて、ヒトの行き来や業務活動の制限も緩和されました。これにより、日本からEU諸国への転勤や短期商用訪問にかかる申請許可要件が簡素化され、日本企業のEUにおける活動のさらなる促進が期待されています。
EPA締結はまさに、中小企業にとって欧州進出が身近になる好機到来と言っても過言ではありません。

欧州進出事例:ランドセルの場合

小学校時代、誰もがお世話になったランドセル。現在ではカラーも豊富になり、大きなランドセルを背負った初々しい新一年生の姿は春の風物詩でもありますね。

ランドセルの語源はオランダ語の“Ransel”であり、その歴史は古く、江戸時代末期にまで遡ります。当時、江戸幕府によって西洋式の軍隊制度が導入された際に、将兵が装備する背嚢(はいのう)としてオランダより輸入されました。これが、現在のランドセルの元となっています。

その日本製ランドセルが今年、欧州への進出を遂げました。兵庫県たつの市にあるランドセル製造販売の株式会社セイバンが、欧州で大人向け製品の販売に乗り出したのです。
2019年に創業100周年を迎えた同社は、次の100年に向けた新たな事業戦略の一環として初の海外ブランドを立ち上げ、100年以上かけて培われたランドセル製造技術を生かして、ドイツで今年8月、大人向けバックパックのオンライン販売を開始しました。
製品自体はたつの市の工場で製造・輸出、販売は現地の協力企業に委託しています。
ドイツでの販売で実績を積むと同時に、欧州各国の市場や顧客ニーズを調査しながら、今後2〜3年かけて欧州全域に販売エリアを拡大していく計画であるということです。

日本国内で長年子ども向けに製造販売を行ってきた製品を、海外向けにリブランディングした上で、大人向けの製品として展開するこの試みは、多くの中小企業にとって参考となるのではないでしょうか。
子どもが6年間使用する丈夫なランドセルの熟練技術が、ひとつの製品を長年大切に愛用するドイツの大人にぴったりと当てはまったのです。日本の優れたものづくりの矜持が欧州へと羽ばたいていった瞬間です。

国内で少子化が進む中、内需が縮小することは避けられません。
また、現状維持がいつまでも続けられるとも限りません。
そんな時代にこそ、これまで培ってきた技術やノウハウを主軸に据えながら、地道な市場調査やブランド刷新を通じて柔軟な発想の転換を行い、欧州市場という未知のフィールドに向けて新たな第一歩を踏み出してみる。
その先には、御社の新たな収益源となる原石が待っているかもしれません。

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